設立趣旨

研究会発足までの経過

最近、いわゆる健康食品の安全性や販売方法の問題、中国製品の信頼性の問題、農薬の問題、またテレビによる数々の誤った放送が社会を駆け巡り、何を信じていいのかわからなくなっている。
このような世の中で、メーカーは新しい製品を開発し、商品にするまでに数多くの試験、テストを繰り返し行い、安全性や有効性が確かめられているが、これらのデータはあまり社会に出ることなく製品は販売されていく。
しかし、メーカー、業界はもとより研究者、行政等はこれらに関する事実を解かりやすく消費者に知らせることが必要である。
しかし一般社会においては、これらの実験結果のデータを見る事がほとんどできないと言える。

このような問題がある中、2005年に細谷先生が日本健康食品協会の理事長を辞められた後、数社のメーカーからいろいろと相談を受けた。
その中にポリフェノールの研究と製造に携わっておられる企業があり、2006年ごろから研究データを持って来て、細谷先生の助言を求められていた。

このポリフェノールという成分は良く理解されていないまま言葉だけが先行しているのではないか、もっと理解しなければいけない成分ではないか。これらについては多くの実験データを取り、積み上げて研究成果を確認しなければならない成分ではないかと助言された。
まだこのような結果では…と黙ってしまった。さらに数週間後に持ってきた新しいデータを検証した結果、細谷先生から“これではだめだよ“と一言。

なぜこのデータがだめなのか問題を整理してみると、

1、実験計画の問題

薬学、医学、工学など学問分野は違うとしても、考え方や研究成果の出し方は同じであるべきなのに、分野によって考え方や研究の取り組み方が異なっている。これが一番大きな問題であることが分かった。
特に人実験については、考え方、取り組み方について多くの喰い違いがみられる。医師であれば血液など生体の情報をたやすく調べることが出来るが、医師でない研究者たちは生体情報を間接的にチェックしなければならない。これが大きな問題でもある。

2、実験のプロセスの問題

研究分野が異なるために研究の取り組み方や研究目的が違ってくる。しかし、流れのある実験計画があれば問題は解決できると思われる。

3、データのまとめ方の問題

1,2の問題が解決できれば、これらについての課題は自ずと解決する事である。 このような問題の解決の観点から研究会を作り、研究分野の異なった研究者が相い集い、無駄のない誰にでも納得して貰える研究を行い、また検討し合うことができれば、これは社会に対しても貢献できるのではないかと思われる。

そこで、

1、研究は人びとの健康の維持さらに増進につながる目的であること。

2、誰にでも納得して貰える実験計画を立て、異なった分野の複数の研究者が分散して研究したとしても、一貫性のあるデータ、資料を作成できるようにすること。

3、一般の人々にも理解が可能なデータ作りであること。

4、研究者が専門分野の領域を超えて情報交換を行い、お互いに理解を深めることである。そのためには、あらゆる研究者がその研究成果を発表できる場を設けること。

5、あらゆる組織の人達と問題点を話し合い、また検討できる研究資料を作成すること。 このような目的を実現するためには、新しい研究会を設立するべきではないか、ということになった。

2007年1月、事務局を開設し、細谷先生を中心に研究会発足に関する打ち合わせを重ね、栄養・医学・薬学・食品・運動・工学の研究者、特に栄養を研究している医師を中心に太田、平松、川上、井川、各先生方にメンバーリストの作成協力をお願いした。
また、幅広く活動するために家森先生と細谷先生との話し合いを東京、京都で数回行い、メンバー、役員などを選択し、さらに企業でポリフェノールを研究している研究者も参加できる研究会にすることを確認した。

これらの考え方を基盤にしていろいろな方面の研究者に研究会設立が必要であることの説明を全国的に行った。
御賛同いただいた先生方にご協力の確約を頂き、研究者はもとより製造・販売等に携わる企業の関係者にも参加していただいて、今日に至った。
また、これからも多くの研究者や企業の方にもここにお集まりいただくために皆様の力を借りて、より多くの人たちが集まることのできるようにしたいと思っている。
前述した事を目的とし、みんなで明るく正しい研究会を目指して、今日の発足会を迎えるに至りましたことを、ここにご報告すると同時にお礼を申し上げます。ありがとうございました。

発足会の挨拶

細谷 憲政

本日はポリフェノール研究会の発足にあたりまして、わざわざご参集いただきましたこと、本当に感謝申し上げております。

唯今、家森先生の御挨拶がありましたが、家森先生に会長になってくれとお願いしたのは私です。会長である家森先生の出席の下で第1回の大会を開催すべきでしたが、諸般の都合で本日ということになりました。今日を越しますと夏休みに入ったり、いろんな問題が起こったりしてきますので、家森先生は録音でご挨拶をお願いするということにして、本日此処にポリフェノール研究会の発足式を開くことに致しました。

ポリフェノール研究会の目的ですが、これを一口に言いますと、信頼できる、信頼させることのできるデータづくり、これに併せて、さらに正しい情報の交換ならびに正しい情報の発信、そしてポリフェノールの価値、それからこれらに関連している企業のイメージアップ、さらに消費者保護、という立場でこのポリフェノールの研究、いわゆるポリフェノールを有効に使う、そして国民のQOLの向上に貢献していきたいということを目的としております。

私は健康栄養食品協会の理事長に10年間在籍していました。この時、研究には学術研究、行政研究、企業研究のあることを強調してきました。栄養所要量などの政府関係の仕事に関与していた時に、行政研究の意義を強調し、協会の理事長時代に企業研究の必要性をPRしました。日本は欧米の先進国に比べて、企業研究は非常にお粗末というか遅れていると思います。そこで企業研究を盛んにするということで、協会で『健康栄養食品研究』という学術雑誌を出版して、トクホを取得するために便宜を計るといいますか、そういう意味合いの学術雑誌を出版致しました。

このポリフェノール研究会につきましては、先程、設立の趣旨説明がございましたが、実は財団に在職している時からの構想です。健康食品のいわゆる企画記事などを作ろうとする時に、ある問題などで十分にPRのできないことに出遭いました。それでは研究会を作ったらどうだろうということが考えられました。その例として、グルコサミン研究会があります。甲陽ケミカルの坂本廣司さんがお膳立てを整えて、整形外科の先生を中心にして、『グルコサミン研究会』を発足させました。私事になりますが、私も去年の9月に変形膝関節症になり、グルコサミンを飲んで、療養しましたので、その結果を報告させて頂きました。

日本は研究というと、学者、研究者による実験動物を用いる実験室における学術研究を意味します。人間を対象とした人間についての観察研究は余り重要視されていません。歩行障害に関する骨や筋肉等の異常状態については、整形外科の先生方は外科手術と医薬品療法で取り組まれています。一方柔道整復師になりますとマッサージ等の保存療法ですので、これにサプリメントを併用してみてはということで、私自身グルコサミンを摂取してみました。その結果として好ましい結果をみることができました。こうした意味合いの新しい観点からの研究を育ててあげていくということも必要と思われます。また、先程言いましたように、信頼できる、信頼させることのできるデータづくりをモットーにして、この研究会を維持、発展していくことが重要と思っております。そういう意味で、ご参集頂いた皆様方にご賛同いただければ、非常に喜ばしいというふうに思っております。今後ともよろしくお願いいたします。簡単ですけれども私の挨拶に代えさせていただきます。

訃報

本会の創設者で、初代理事長であられました細谷憲政先生が2016年8月14日(日)ご逝去されました。享年91歳。
先生のご功績を偲び、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。